こんにちは!ケアウィルコミュニケーションチームのおみーです。
ケアウィルでは、「着たい、選びたい、着て人と会いたい」 という気持ちを大切に、機能とデザインを両立させた 「ケア衣料」 を開発しています。
この度、新たなケア衣料として「アームスリングシャツ」が仲間入りしました!
「アームスリングシャツ」は、脳血管障害や整形疾患(骨折、腱板断裂等)により上肢に不自由を伴う方のための日常着です。不安定な腕を体にしっかりとホールドしてくれます。歩行訓練や車椅子での移動、介助者による移乗などの場面でも役立ちます。
腕のホールド力に加えて、一人で着られること、季節を問わずにオールシーズンで、男女を問わず着られるといったことにもこだわりました。現在は予約注文受付中です。
ケアウィルは「科学的な裏付け」を大切にしています。ケア衣料だからこそ、単なる使用感や口コミだけでなく、客観的なデータに基づいた信頼性の高い製品を届けたいと考えているからです。「安心して選べる製品づくり」を実現するため、被服学やリハビリテーションの専門家と共に学術的な評価を行いました。
これまでの連載では、「アームスリングシャツ」の誕生背景や、作業療法の視点からの意義をお届けしました。今回は 「被服学」の視点 から、製品を支える科学についてお話します!
「被服学」にアツい情熱を持つ、山田巧博士
お話を伺ったのは、東京都立産業技術研究センターの山田巧博士。
山田巧博士:被服学にアツい情熱を持っています
「被服学」とは、衣服単体ではなく、実際に服を「着る人」との関係性を科学的に検証し、より快適で機能的な衣服をつくるための研究分野です。2000年代のクールビズやウォームビズをきっかけに、スポーツウェアの技術が一般衣料にも広がりました。山田博士もこれまで「暑い環境でも快適に過ごせるコンプレッションウェア」など、多くの機能性衣服を研究しています。
今回の『アームスリングシャツ』でも、快適性や機能性を科学的に評価する試験を担当いただきました。
「こうきたか!」被服学の専門家が驚いたデザインの工夫
―アームスリングシャツを初めて見た時の印象を教えてください!
山田さん:『こうきたか!』と思いました。
特に腕の固定部分が面ファスナーになっていて、これなら自分で位置を簡単に微調整できるなと感じました。面ファスナーを使うことで高コストにもならず、良い機能を実現していると思います。
面ファスナーで固定部分を微調整できます
― 実際に着てみたらどうでしたか?。
山田さん:一人で簡単に着られ、腕がしっかり固定される点には驚きました。
簡単に着れて、しっかり固定されます
実際に着てみて、服を着る動作そのものに新たな発見がありました。服をかぶるのが先か、腕を通すのが先か、日頃の生活では意識しませんが、腕が動かない、力が抜けた状態で着る方々の苦労を肌で感じました。しかし、服の構造がシンプルで着用の段取りが工夫されているおかげで、着やすさが実現されていますね。
夏場も快適に。実験で確かめた性能
―評価試験の結果はいかがでしたか?
山田さん:従来のアームスリングケープと比べて蒸れにくく、涼しく快適であることが分かりました。具体的には、『サーマルマネキン』という人間の体温や汗を再現した特殊なマネキンにウェアを着せ、どれくらい熱や湿気がこもるかを測定しました。
サーマルマネキン
その結果、ウェア内に熱や湿気がこもりにくいことが分かりました。従来のアームスリングケープと比べて約40%も涼しく、夏でも快適に着用できる性能が確認できました。
―暑い季節でも快適に着られるのは嬉しいですね!実際に着る方々にとっても、これなら気兼ねなく日常で使っていただけそうです。
長時間でも疲れにくい。衣服圧を評価する
山田さん:さらに今回は、「衣服圧評価」という試験も行いました。この試験では、センサーを取り付けたマネキンにアームスリングシャツを着せて、首や腕にどの程度の圧力がかかるかを測定します。
マネキンにつけたセンサーが圧力を測定
測定した結果、腕を安定して支えるだけでなく、長時間着用しても疲れにくく、快適に過ごせることが実証されました。従来のものに比べて、腕をしっかり支えるホールド力が向上しているだけでなく、市販の三角巾と比較して、頸部への負担が大幅に軽減されています。
アームスリングシャツは涼しく、疲れにくいと判明!
― 服の快適さはこのように評価するんですね!具体的なデータがあると、使う方も安心です。
山田さん:そうですね。特に医療や福祉分野では、客観的なデータが安心感につながりますから。
企業×大学×研究機関。それぞれの専門性に集中した製品開発
― 今回は、複数の専門家が集まり学術的根拠に基づく製品開発が行われました。共同研究のよさはどんなところにありましたか?
山田さん:企業、大学、研究機関がそれぞれの得意分野に集中できることですね。企業はユーザーのニーズを具体的な製品デザインに落とし込み、大学はユーザーの心理的な使用感を把握、私たち研究機関は性能を科学的に評価しました。より実用的で使いやすい製品が完成したと思います。
― 研究を通じて特に感じたことはありましたか?
山田さん:「腕を通す動作」がこんなに重要だとは、自分一人の研究ではなかなか気づけませんでした。実際の着用を通じて、服を使う方の目線を実感できたのが一番大きな収穫でした。
― 違う専門性が集まると、視野も広がりますね。
山田さん:まさにそうですね。専門家同士が協力することで、本当にユーザーに役立つ製品が完成したと思います。
今回のインタビューを通じて、『アームスリングシャツ』がなぜ快適に使えるのか、被服学の科学的評価が重要な役割を果たしていることが分かりました。製品の性能が数値で評価されることで、使う方にも安心感を届けられます。ケアウィルでは、これからもユーザーの視点と科学的な根拠に基づき、より良い製品をお届けしていきます。
次回はケアウィル代表の笈沼、大阪公立大学の竹林教授、山田博士の3者による共同インタビューをお届けします。それぞれの視点から見た製品開発の裏側や、協力して生まれた成果について詳しく伺います。お楽しみに!